奄美大島で考えた「人間と自然」

新型コロナウィルスは、野生動物から感染が始まったといわれています。人間の自然に対する傲慢なおこないが、自然界からの逆襲にあっていると言えなくもありません。

そこで思い出すのがゴジラ。ゴジラは、原水爆実験により太古の眠りから呼び覚まされ、人間に対して逆襲するのです。

その映画ゴジラの撮影がなされた奄美大島の金作原原生林に、先週末行ってきました。 金作原原生林は亜熱帯性の木々が生い茂り、なるほどゴジラにふさわしい場所です。認定エコガイドと一緒のツアーでしか、その原生林に入ることはできません。

巨大なヒカゲヘゴ(樹ではなくシダです)
樹齢150年以上の椎の木

ガイドの解説により、目の前の風景が時間的、空間的に広がったものに感じられることが不思議です。知識はこうした五感と結びつくことで、適切に意味されることが体感できました。

さてガイドの解説で興味深かったのは、奄美大島の成り立ちの歴史と動物の関係です。奄美大島は1000万年前までは大陸と陸続きでした。そして約200万年前、 奄美大島、徳之島、沖縄島を含む中琉球が大陸から隔離されます。

かつては近隣地域にも分布していた種(系統群)が絶滅していく中、新たな天敵(捕食者)やライバル(競争相手)が越えられない海峡で隔てられた島嶼にだけ種が生き残りました。 隔離により種分化し、島独自の環境へ適応し固有種へと進化しました。

ハブは沖縄-奄美大島-徳之島には生き残っていますが、海峡をはさんだそれより北にはいません。 アマミノクロウサギは、かつては大陸にもいたのでしょうが絶滅し、奄美大島と徳之島だけに生き残りました。奄美大島には鹿や猿などの大型動物はおらず、生物連鎖の頂点はハブだったので、ハブから逃れる術を身に付けたことで生き残ったのでしょう (ハブや夜行性でマングースは昼間活動します )。最も原始的形態を残したウサギといわれています。

アマミノクロウサギの剥製

しかし人間にとっても、ハブは恐ろしい生きものです。そこで、ハブの天敵といえばマングース。1979年に30頭のマングースが島に放たれました。ところが一向にハブは減りません。マングースは昼間活動するので、夜行性のハブと決闘することなく、代わりにアマミノクロウサギを食べていたのです。おかげでマングースはどんどん増え (2000年頃には約1万頭) 、アマミノクロウサギは激減。

連れてこられた可哀そうなマングース

そこで、2005年にマングースバスターズが結成され、現時点ではほとんど駆除されたそうです。おかげで、アマミノクロウサギは増加しているとのこと。ツアーで見ることはできませんでしたが、道の脇の糞は見ました。草むらでなく、開けたところで糞をするのは視界が開けていた方が安全だからだそうです。

しかし、新たな敵が現れています。それは人によって捨てられた野良猫(現地ではノネコ)。従って、現在はノネコの駆除が、保護活動の中心になっています。

このように、生態系はとてもデリケートなもので、そこに軽はずみに人間が介入することで、簡単に崩れてしまう。 人間は自然に対して、もっと謙虚になるべきでしょう。

ノネコ、アマミノクロウサギをハント

そして、もうひとつ教訓があります。問題を解決すべく人間が考えて行う施策には、必ず他への波及効果がある。時間的にも空間的にも因果関係が複雑に絡み合う。そうした波及効果をある程度見越したうえで総合的な判断をすべきです。しかし、全ての波及効果まで見通すことは不可能。ただ、不可能だと認識したうえで、今何をすべきかを決めるのと、短絡的に「釘が出ているので打とう」とするのでは、自ずと結果は異なるはず。また、全体は把握できないとしても、クリティカルポイントのあたりはつけられるかもしれない。

そうした人間の英知や見識を、今のような不確実性の真っただ中では大切にしたいものです。

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