「本物にどれだけ触れてきたかが、長い目で見れば人間としての能力や魅力の大きな差につながってくる」
昔何かの本で読んだことがあり、それがずっと頭の中に残っています。流行に左右されるものでない本物は、人間の核を形成するのに大切だと思います。
また、田中清玄がこう書いていました。
「あらゆる物質は、核がなければ結晶しない。人間も同じ。哲学のある人、信念を持っている人とそうでない人とでは、大変な違いがある。」
核とは、歴史に耐えてきた本物なのでしょう。本物に触れ、そこから何かをつかみ取り、自分自身の核を形成していく。そのことの重要性を、思い出させてくれたのが、1/4の日経朝刊に掲載されていた、今井賢一氏による「経済教室」の論稿でした。
東京の強みは、「多様な技術・文化変換装置」としての優位性にあるそうです。世界のあらゆるハード・ソフトの技術と文化を吸収し、修正し、複製を超えて再創造し、違うものに変換して再び世界に戻す能力にかけては、東京は世界一だと論じています。
そして、東京にそれが可能なのは、東京の奥に存在する京都・奈良に「歴史に培われた本物」があり、それにつながっているからだといいます。本物につながっているからこそ、新しいものを貪欲に取り入れ変換することができる。
私も10年前くらいまでは、京都・奈良との接点がほとんどなく、東京の喧噪に流されているように感じていました。その後、仕事の関係で関西方面に行く機会が増え、京都・奈良にも何度も通うようになりました。そこで、何度も「なんだ、こういうことだったのか」と、現在と過去のつながりに気づかされたものです。それによって、少しは物事を立体的に捉えることができるようになった気がします。
都市も人間も、その意味では全く同じなのでしょう。日本という国や日本人として、まだまだ誇りを持ち世界に発信できるものがたくさんあります。何かと元気がなくなる話題が多い今日この頃ですが、歴史に培われた本物を核として、世界に貢献することを考えていきたいものです。
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