経営戦略: 2012年7月アーカイブ

昔から経営資源には、ヒト・モノ・カネがあると言われていますが、この3要素の関係はどうなっているのでしょう。

 

儲かりそうなモノを造ったり仕入れたりして売買するために、必要なヒトやカネを投入するという関係が普通だったと思います。貴重な香辛料を売買するためにお金を集めて船を造り、船長や船員を集めるという大航海時代から、それは一貫していました。特に戦後日本では、カネを調達するのが大変でした。

 

しかし、近年おカネ自体が商品になる傾向がありますし、またおカネを蓄積してその有効活用を図ることを主業務にするサービス業が増えています。年金基金や投資ファンドがその代表です。その背景には、社会が成熟、高齢化し、おカネはたまっていても運用先が乏しいという世界的傾向があります。そう、カネ余りです。銀行は貸出先が見つけられず、預金で集めた資金の半分以上を国債で運用する始末です。

 

さらに人口減少時代を迎えた日本では、労働者一人当りの生産性を向上させなければ、高齢化する社会を支えることができません。

 

そういう時代においては、経営資源3要素の関係も変わらざるをえません。余っているカネを活かせて、またヒトの能力を最大限発揮させることのできるモノを探すという形が普通になってくるでしょう。つまり、モノの位置づけが主から従になり、カネとヒトが従から主になります。ただしカネはコモディティ、つまりそれ自体に意味はありません。量が問題であって質は意味を持ちません。

 

一方、ヒトは量よりも質が意味を持ちます。Aさんが1時間で生み出す価値の100倍の価値を、Bさんが生み出すことには何の不思議もありません。これはBさんの能力が高いからかもしれませんが、それ以上にBさんとAさんとでは能力を活かす場、もう少しいえば関わっている仕掛けが違うからと言えそうです。

 

ヒトとカネを活かせるモノ(あるいは仕掛け)を探すことと、

モノを造るためのヒトとカネを探すことは、

似て非なるものです。

 

日本メーカーの多くが苦境に陥っているのは、後者のパラダイムから抜け出せないからではないでしょうか。

 

ソニーの会社設立の目的の一つに以下があります。

一、真面目ナル技術者ノ技能ヲ、最高度ニ発揮セシムベキ自由豁達ニシテ愉快ナル理想工場ノ建設 

 

ソニーに限らず、本来日本的経営は、ヒトを活かすことを第一にしていました。それがいつのまにかアメリカ型経営にかぶれて、多くを見失ってしまった。

 

しかし、考えようによっては、これからの成熟した時代には、日本の本来の強みが活きると考えることもできます。そのために、ヒトの能力を活かすことを第一に考えるべきです。そのための場づくりにはノウハウはありそうですが、仕掛けづくりはまだまだです。それが今の日本企業最大のチャレンジでしょう。

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