経営戦略: 2011年10月アーカイブ

今朝の日経トップで、アマゾンが日本で電子書籍事業に参入すると掲載しました。やっとかとの印象ですが、日本でのスマートオフォン拡販によって電子書籍市場が立ち上がると判断したのかもしれません。

 

その記事の中に「国内の主な電子書籍配信サイト」の表がありました。それによると、ソニー系、紀伊国屋系、大日本印刷&NTTドコモ系、シャープ系、楽天系、凸版印刷&インテル系、と6つの主な運営事業者が挙げられています。

 

電子書籍用機器メーカー、印刷会社、書店、ネット事業社といった、電子書籍周辺の大企業が軒並み独自陣営を築いて参入していることがわかります。主なグループだけで6つあるのですから、本当はもっともっとあるのでしょう。

 

既存大企業が競合に出し抜かれまいと、あせって参入する姿が目に浮かびます。もちろん新規事業参入は、経済活性化のために好ましいことですが、それによってこれまでどれだけの価値を提供してきたのか、冷静に考えてみる必要があるでしょう。横並びの市場参入が過当競争を招き、多くの企業が疲弊し徹底しました。撤退自体は仕方ないですが、その過程での過当競争が適切な事業の育成を妨げてしまったことも多いと思います。その結果、消費者は市場を離れ、ペンペン草も生えない市場となった。もっと大事に市場を育てれば大きくなったかもしれないのに。挙句の果てに、戦略的に事業拡大を図ってきた海外のジャイアントに一気に日本市場を奪われる、こんなパターンが繰り返されてきたのではないでしょうか。

 

こうなる理由は、海外ではベンチャー企業が担う市場創造の役割を、余剰資源を抱えた既存大企業が最初から自ら手掛けようとするからに違いありません。また、アップルやアマゾンのように他社を巻き込んでエコシステムを構築するといったような、大きな構想を描くことができる企業がないことも理由のひとつでしょう。突拍子もない大きな絵を描ける異能の社員は、多くの日本企業では大きな力を持てないからでしょう。EVAなどの財務データ重視の経営が浸透するにつれて、ますますその傾向は強まっているようです。ソニーを見ていてつくづくそう感じます。

 

電子書籍を利用したい一読者としては、早くアマゾンに日本市場に本気で取り組んでほしいと願うばかりです。残念ですが。


 

それから、著者の権利を守るべく電子書籍に反対、あるいは都合いいように管理しようという出版業界も、まるで農産物輸入反対を唱え続けながら自ら没落しつつあるJA(農協)を見るようです。顧客のためといいながら、既得権益保護を最優先で考えている。経済合理性だけでははかりがたい食料や思想、(出版)文化を盾にして保身を図る人々の本音をしっかり見極めなければなりません。TPPに関する議論も、経済合理性では図れないものがあることも事実ですが、それだけに終始するのではなく、経済合理性とのバランス判断にまで突っ込んだまっとうでオープンな議論をしていただきたいものです。(ちょっと話がそれました・・・)

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