文化と芸術: 2010年3月アーカイブ

先週金曜、話題の長谷川等伯展を観てきました。金曜のみ20時までオープンにしているので、あえて金曜夜に行ったのですが、それでも大勢の人で、最後の「松林図屏風」は、全体を観ることは叶いませんでした。(すぐ近くでへばりつくのは止めてほしい!)

 

確かに、これだけ一同の等伯の作品が揃うことは画期的でしょう。能登の仏画家時代から晩年まで、等伯の人生を想像させる展示です。関白秀吉をめぐるライバル狩野永徳との軋轢も感じることもできます。

 

うまいのは当然として、あれだけスタイルを時代時代で変えていき、しかもどれも一流の作品を残す天才だと、よくわかりました。たまたま読んでいた内田樹と甲野善紀の対談本で、内田はこう書いていました。

 

いくら変化しても、変化の仕方は変化しない人が「凡人」であり、変化する度に、変化する仕方そのものまで変化する人が「天才」というにではないか。(中略)進化におけるこの「断絶」が天才の天才性の徴ではないかと僕は思います。

 

 

また、今朝の朝日新聞でのインタビュー記事で、モントリオール映画祭の創設者で選定ディレクターのセルジュ・ロジークが、「歴史上最高の映画監督は黒澤明だ。ジョン・フォードもチャップリンも素晴らしいが、あれだけいろいろスタイルを変えて、しかもすべて高い完成度を示せるのは黒澤明だけ」と述べていました。(また、うろ覚えですが)

 

内田氏の定義で、長谷川等伯も黒澤明も正真正銘の天才だと思います。

 

とこで、やはり「松林図屏風」は傑作です。下絵との説が有力だそうです   松2.jpgが、関係ありません。湿気を帯びた静寂の空気の中で、松が何を想いながらか、ダンスを踊り続けているように見えました。そこはかとなく、哀しさと気品をただよわせながら。

 

そこで思い出したのが、映画『落下の王国』に出てきた、長いスカートをはためかせながらワルツ?を踊るダンサーたちの姿です。時と空間を越えて夢想する、これが芸術を楽しむ醍醐味ですね。 落下の王国.jpg

このアーカイブについて

このページには、2010年3月以降に書かれたブログ記事のうち文化と芸術カテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブは文化と芸術: 2010年2月です。

次のアーカイブは文化と芸術: 2010年4月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.1