社会: 2010年11月アーカイブ

今政府では、追突映像をYouTubeに流した犯人探しに躍起になっています。政府としては、面子の問題もありそうせざるを得ないでしょう。問題は、多くのマスコミもそれに追随していることです。政府をたたく材料としては、視聴率を稼げるのでしょう。一方、多くの国民は公開した「犯人」に喝采を送っています。「なんでこれだけの映像を政府は公開しなかったのか」「海上保安庁の現場は頑張っていたことがわかった」との思いを抱いているのではないでしょうか。私もYouTubeですぐに観ましたが、そう感じました。

 

しかし、本当の問題は、実質的な公開された映像の内容に対して、政府としてどう対外的なスタンスをとるかです。それに対しては何も発言していないように思います。せっかく船長の拘留を解いて火消しをはかったのに、矛盾を生じさせてしまうとの懸念や、中国への配慮があるのでしょうが、すでに世界中の人の目に触れた映像に対して、頬かむりしているような印象を世界に与えるでしょう。そうなってしまう原因は、外交の軸がないからにつきます。そのしっぺかえしは、これからあらゆる場面で出てきて、日本政府の交渉力を削ぐことになるでしょう。

 

今回の映像流出劇で、最も恩恵を受けたのは中国だと思います。映像が暴露されたことにより、日本国民の中国への反感が高まる恐れは当然あるはずですが、結果として国民のほこ先は日本政府に向かっています。もし、そこまで見切って中国政府が映像を確保しYouTubeに流したとしたら、ものすごく戦略的です。(さすがにそれはないでしょうが)

 

映像流出は、国会議員の一部だけに公開された直後でした。そのままいけば、やがて証拠映像の国民への公開となり、その結果国民から中国批判が噴出したかもしれません。そこを、先に流出公開してしまえば、国民の怒りの矛先は中国ではなく日本政府に向かう。

 

映像流出直前の警察情報漏えいの発覚も、日本政府への批判に強力な材料を与えてくれます。政府の情報管理の稚拙さでは、追突映像も警察情報流出も同じですから。そこにつながりがあるかどうかはわかりません。

 

なんだかスパイ映画のようになってきましたが、インテリジェンスの世界では何が起こってもおかしくないのでしょう。それに対する免疫がどれだけあるのか、不安です。

大学2年の夏休み、一か月ほどオーストラリアを貧乏旅行してきました。初めての海外旅行で何もかもが新鮮に見えた気がしました。オーストラリア大陸の大

アボリジニ.jpg

部分は砂漠ですが、中央部にエアーズロックという巨大な岩があります。そこに至るには、アボリジニという先住民族が居住する地域を通っていかねばなりません。長距離バスで移動していた私も、バスでそこを通りました。道端には、昼間から酒を飲み酔っ払っているアボリジニが大勢、ふらついています。中には、木などに動物などを描いた作品(現在はアボリジニ・アートとして人気)

を販売している人もいますが、多くは単なる怠け者にしか見えませんでした。

 

知り合ったオーストラリア人に聞いてみると、政府が先住民の土地を利用してうる代償に、保護区を定め、そこのアボリジニには金銭保障もしているとのこと。だから、昼間から酔っ払っていられるのです。でも、保護することで彼らをスポイルし、近い将来アボリジニはいなくなってしまうのではないかと、その時強く感じました。保護することで絶滅させる。意図的にそれを狙っているのか、善意でやっているのかは分かりませんが、一瞬背筋が寒くなったことを覚えています。

 

なんでこんなことを思い出したかというと、先日(10/3)NHKのETV特集 「なぜ希望は消えた? -あるコメ農家と霞が関の半世紀」という番組をみたことと、突然現れたTPP騒動のためです。

 

当人は良かれと思い行ったことが、巡り巡って悲惨な結果を招く。システム・シンキングでは「応急処置の失敗」と呼ぶシステム原型です。それを日本という国家が半世紀にわたってきたのが農政なのです。もちろん、そんな単純な問題ではなく政治や経済状況など、様々な問題が絡み合っていることは事実です。しかし、本質は「応急処置の失敗」に違いないでしょう。

 

政治とは、「応急処置の失敗」にならないように、そうなりがちな大衆を説得して、長期的繁栄の仕組みを作り、実行させることだと思います。それが、ますます近視眼的になっているような恐怖すら感じます。ステーツマンはどこにいるのでしょうか?

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