最近、「ニューノーマル」という言葉を耳にすることが増えました。アメリカ発の言葉です。リーマン・ショック後の不況というトンネルの先には、従来と違う世界が待っているとの見方です。マッキンゼーの世論調査によると、支出を減らした人の過半数が、「景気が回復しても倹約を続ける」と答えたそうです。
感覚的には、日本も同様だと思います。私の世代は、物心ついてから三度の大きなバブルとその崩壊を経験しています。最初は、列島改造とオイルショックのセット。小学生だった私も、お菓子の値段が急に上がったことと、TVで観たトイレットペーパーの奪いあいは、強烈な記憶として残っています。
次は、ご存じ80年代後半からのバブルとその崩壊。円高不況脱出のために仕組まれたバブルが崩壊するのは必然でした。バブル時は、そもそも若年で貧乏だったのであまり恩恵に与っていませんが、崩壊の影響は人並にかぶりました。
そして、小泉改革と円安政策をきっかけにしたミニバブルとリーマン・ショックです。不動産屋が肩で風を切って歩く姿を見て、いつか見た風景だと思ったものです。バブル崩壊が日本だけでなく、世界的だったことが、過去二回とは全く異なります。また、日本の産業構造が、製造業主体からサービス主体にシフトしているため、政府の景気対策は過去二回ほど機能していません。(中国は機能しています)
さすがに、三度も、持ち上げておいて突き落される経験を積めば、いやでも学習します。つまり、過大な夢は抱かず、堅実な消費にならざるを得ないというわけです。
世代によって多少感じ方が違うとはいえ、これが日本独自の「ニューノーマル」なのではないでしょうか。少子高齢化と相まって、これが今後の日本経済や社会に与える影響は、計り知れないほど大きいのではと危惧します。
「ニューノーマル」とは、「Back to basic」だとも言えそうです。基本に帰れ。不況脱出ための小賢しい手練手管ではなく、長期的視点で本当に大切なものや、自分たちがもっとも得意とするもの、仕事や生きることの意味などを見つめ直してみるいい機会かもしれません。そうすれば日本も、もう少し落ち着いた大人の国になることでしょう。