社会: 2009年7月アーカイブ

昨日たまたま聞いていたFM番組で、松尾貴史さんがこう言っていました。

 

「よく、『頑張ってね』と言われるが、もっと頑張んなきゃいけないのか、と思って疲れてしまう。」

 

この率直な言葉に、私はひっかかりました。もちろん、言う方は単に励ますだけの意味で言っていることくらい誰でもわかります。でも、ひっかかるのです。

 

「頑張れ」の言葉の背景には、「今より一歩でも上を目指せ。そうすれば、きっといいことが待っているよ」という楽観論があるように思えます。頑張れば、今日より明日は必ず良くなる。

 

こういう、ある意味、競争に基づく成長を促進するようなパラダイムに、松尾さんを初め多くの方が疑問を持ち始めているのではないでしょうか。

 

 

派遣切りやフリーター問題は、他人ごとがと思っている人も多いかもしれませんが、今朝の日経朝刊の記事にあった、日経平均株価への投資の記事を読むと、そうも言っていられないという気になります。

 

ドルコスト平均法(定期的に一定金額を投資する手法)で、日経平均指数を大学卒業後買い続けたとして、今どれだけ儲かっているかを、年齢ごとに計算したものです。それによると、現在60歳の人でやっとわずかなプラス。それより若い人は全員含み損を抱えています。最悪なのは、45歳。たしか37%くらいのマイナスでした。

 

これが意味するのは、こと株式市場に限定すれば、今日より明日が必ず幸せという神話が崩壊しているという事実です。

 

頑張っても、良くはならない。そう思っている人が、年金や社会保険に粛々とお金を支払続けるでしょうか。安心がなければ、どれだけ金融資産をたくさん持っていたとしても、決して豊かとは感じないでしょう。そこに政府の役割があるはずです。

 

頑張らなくても、安心して豊かさを感じられる国、日本がそうなるといいですね。

新聞やニュースでご存知の方も多いと思いますが、深夜若者達(10代後半から20代前半)が騒ぐのを止めさせるために、足立区モスキート音.jpgの某公園に、深夜11時を過ぎるとモスキート音を発生させる装置が区によって設置されました。

 

このモスキート音は若者にしか聴こえないのがみそ。聴こえる人には、頭が割れそうになるくらいの代物だそうです。ここまでしなければならないほど、付近住民は困っていたのでしょう。

 

設置から一ヵ月半が経ち、狙い通り深夜の若者は消えたようです。

 

設置開始の5/21に、たまたま夜のニュースでこのことを知りました。そのとき、なんとなくイヤに気持ちになりました。

 

    集蛾灯に集まってちりちり音を立てながら殺される虫を想像しました。設置は集めるためではなく、近づかないようにするためですが、なんだか同じだと思うのです。人間を虫と同じに扱っている

    若者にしか聴こえない音があることに驚きました。それによって、あるセグメントの人間をコントロールできる

    その場しのぎの対策の最たるものだと思いました。もし、他の公園に集まったらそこにも設置するのか。全く根本的解決にはなっていません。逆に、このような仕打ちを受けた若者の不満は、別の形で爆発するのでは

 

あるNPOの代表がインタビューにこう答えていました。(うろ覚えですが)

「問題は、公園に集まることではなく、彼らに帰る場所がないことだ。地域住民や役所が、粘り強くその問題に取り組まない限り、彼らはますますエスカレートするだろう」

全く同感です。

 

 

システム・シンキングの分野に、「応急措置の失敗」というシステム原型があります。応急措置によっていったん沈静化した問題が、やがて遅れをともなって意図しなかった結果が生まれ、さらに問題を拡大するというシステムの構造を意味します。

 

今回のばら撒き予算といい、あらゆるところに「応急措置の失敗」がはびこっているように思えてなりません。

 

 

 

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