組織の能力: 2019年6月アーカイブ

忖度と社長の視座

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日本企業の生産性の低さは、今では有名です。ひとりひとりは優秀で、手を抜くことはあまりせず、集中力も決して低くはない。にもかかわらず、なぜ生産性が低いのでしょうか?

 

 

ある大企業の新任執行役員を集めて研修を行うことになりました。例年であれば、リゾートホテルに集まり、社長講和や役員としての心構えや法規制などのレクチャーを受け、翌日ゴルフして解散というパターンでした。

 

ところが、昨年就任した新社長はそれでは不満で、もっと勉強させろという指示が事務方に降りたのです。

 

事務方は慌てていろいろ検討しました。そして、こう考えました。

昨年の社長就任とともに、新中期経営計画を発表した。その計画を実行に移すための方策を、新任執行役員に考えて欲しいに違いない。その発表を、ホテルでの研修の際に行うことにしよう。

 

このコンセプトのもとに準備が始まりました。部門を超えたグループで検討を進め、発表するものです。発表の相手は社長です。社長はこの機会に、新任執行役員ひとりひとりの品定めをすることは、容易に想像できます。メンバーのプレッシャーも相当なものになるでしょう。

 

できるだけ、期待に応えられるように支援することが、私たちのミッションです。

 

事務方は、体制や運営方法もつめ、社長に最終確認を得るべく報告しました。貴重な社長の時間を使うのですから、完璧に詰め想定問答も準備した上でのぞみました。

 

ところが、中期経営計画について取り組ませたいと説明した瞬間、社長はばっさり否定。「そんなものは、普段仕事で考えていることだろう。もっと、その大元を考えさせなければダメだ。」

 

そして、すぐに対案を指示。

「歴史観、社会や経済の構造変化、そして日本の生産性向上について考えさせよう」

 

事務方としては想定外の展開でした。

 

経営計画について検討させるのと、歴史認識について考えさせるのでは、あまりに次元が違い過ぎるように感じました。しかし、もともと社長が考えさせかったのは、そういうことだったのでしょう。

 

過去のパターンから中期経営計画がテーマでよいと想定し、それに基づいて準備を進めてきたのが間違いだった。

 

もしかしたら、社長はそういう仕事の進め方自体を変えたいと考えているのかもしれません。かつては、こういった阿吽の仕事の進め方が生産性を高めていたのかもしれませんが、もうそういう時代ではないことをわからせたい。

 

過去の枠組みをとっぱらうために、一時的な生産性低下(これまでの準備)を甘受する。現場は振り回されるでしょうが、変革のために必要なステップなのでしょう。

 

また、もうひとつの想いは、新任執行役員には、少しでも社長の視座に近づいてほしいということ。

 

しかし、このテーマで社長に発表するのは、本当に大変です。

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