どんな企業であっても、強い組織をつくることは大きな課題でしょう。では、強い組織とは何でしょうか?持続的に競合より高いパフォーマンスを上げることができる組織だと言えます。
強い組織を作るには、いくつかのアプローチがあります。
1)構成する人材の能力を高める(人材開発)
2)強い組織となることを促すような制度やシステムをつくる(ハード)
3)組織を構成する個人間の関係性を開発する(組織開発1)
4)仕事で密接な組織間の関係性を開発する(組織開発1)
主なアプローチはこの四つです。これまで日本企業では、1)の人材開発をすれば必然的の組織が強くなるとの思い込みがありました。確かに欧米企業に比べ「組織化」の必要性は今でも低いと思います。部署をつくり人をアサインすれば、何となく役割分担もできて、「組織」が出来上がっています。これは日本人の長所です。いい人材さえ集めれば、そのままいい組織ができていた。
融和的な組織づくりは得意ですが、ではできた組織の生産性は高いのかというと、かなり低いと言わざるを得ません。とういうよりも、生産性という観点が欠落しているようにも思えます。この点は伊賀氏が「生産性」で書いているとおりです。
融和的な組織はできても強い組織にはなっていない。だから人材開発だけでなく、組織の開発が必要なのです。具体的には、生産性が高まるような関係性の開発です。生産性が高まる関係性の開発とは何でしょうか?
ひとつは、生産性の分母であるインプットを最小化すること。無駄をなくして効率性を高めることを目指します。改善を中心に、ここは日本人の得意分野です。
もう一つは、分子であるアウトプットを最大化すること。関係性の開発によってアウトプットを高めることにも、二つのアプローチがあります。ひとつは、アウトプット創出の妨げとなっていた障害を取り除くこと。もうひとつは、新しい「知識」を創造することです。これらは、裏返しの関係のように思えるかもしれませんが、そうではありません。5+5が7だったものを、10にするか15にするかの違いです。10と15は、程度の違いではなく別ものです。
どちらにしろ、ルーティーンに埋没している当事者が、それを実現するのはとても難しい。内部適合の結果として、障害物が構築されているのですから。したがって、第三者による組織に対する直接の働きかけ、すなわち介入がなければ実現できません。
それから、強い組織を作っていくにあたって、既存の強みを強化する方向と、これまで持ってない強みを獲得していく方向では、全く方法論は異なってきます。
このように、強い組織を作る手段としての人材開発だけでは、もう難しくなってきています。そこのところに、ぽっかりと穴が開いているのです。