経営: 2016年3月アーカイブ

最近というか10年くらい前から、電車の中で新聞(紙の)を読んでいる人はほとんどいなくなりました。私はまだ読むので、社内で新聞を読んでいる人が隣や前にいると、思わず同好の士だと親近感を持ちます。

 

他の乗客はほとんどスマホをいじっています。ゲームかSNSですね。通勤時間に何に時間を費やすかは、結構大事な判断だと思います。SNSでは、主に友人の投稿を読んでいるわけで、それがそんなに面白いのかと私は思ってしまいます。それよりも、プロの新聞記者が書いた記事の方が質も高く、有益に決まっています。にもかかわらず、SNSに多くの時間を費やす人の方が今や「ふつう」なので、友人の寄稿がそれだけ面白いと判断せざるをえません。なぜだ??

 

これは、私にとって謎でした。

そこに、一つの回答を得ることができました。佐渡島庸平著「ぼくらの仮説が世界をつくる」にこうあり、なるほどーと納得!

 

一方、SNSでつながっているのは、知り合いや興味のある人たちです。親近感のある人たちとも言えます。身近な人が発信するから、ぜんぜん知らないプロの文章よりも「面白い」と感じるのです。

 面白さというのは、<親近感X質の絶対値>の「面積」だったのです。

 

「親近感」という要素が加わることで、多くの謎が解けます。「おふくろの味が一番」なのは、質ではなく親近感ゆえだそうです。

 

私はこれまで、質と親近感が同じレベルで比較されるとは思いもよりませんでしたが、言われてみればそうかもしれません。

 

親近感をもう少し掘り下げてみたいと思います。なぜ、人は親近感があると面白く感じるのか。

 

親近感とは、対象と自分に共通項があることです。友人とは多くの経験を共有しているでしょう。知らない人でも高校が同じというだけで親近感を持つのは、何かを(何かわかりませんが)共有しているはずだと感じるからでしょう。それを媒介にして「つながっている」はずだと思える。

 

つながっている対象と共通項があるということは、相手(対象)の断片的な発言から、それを起点として様々な想像をふくらませることができます。そこに書かれた文字情報以外の既知の情報と結びつけることで、全く未知の人の発言の何倍もの情報(思い込みも含め)を獲得できる。だから想像の余地が膨らみ、共感を得やすくなります。

 

人間は、本能的に「共感」を好ましいもの、つまり「面白い」と認識するのでしょう。また、想像を膨らませること自体を「面白い」と認識するのではないでしょうか。また「面白い」ものを想像して作っていくとも言えるかも。

 

これらは供給者である企業に、どのような示唆を与えるでしょうか。

 

あらゆる業界で、質の絶対値で差を大きくつけることが難しくなっています。だから、親近感に勝負の土俵が移りつつある。親近感とは共通項を持つことであり、それは想像を刺激する体験を共有し共感すること。User experienceにこだわったAppleは、最も親近感の醸成に長けた企業と言えます。Apple toreに入った瞬間から親近感醸成プロセスは始まります。User experienceとは、Apple(製品もサービスも)とユーザーの相互作用に他なりません。

 

何らかの「場」を共有し、そこで顧客と共働でなにかをつくりあげていくような「体験」をもたらすサービスは「親近感」重視のビジネスといえます。それがネット上である場合もありますが、リアルな世界の方がよりパワフルです。ただし、規模は稼ぐのは困難。

 

親近感を醸成する仕組みの設計、これからの重要なテーマです。


追記:この佐渡島氏の著書は、おっ!と思わせる新鮮な着眼がたくさん書かれており刺激的です。情報収集→仮説構築ではなく、仮説構築→情報収集という記載も、我が意を得たりでした。

ぼくらの仮説が世界をつくる
佐渡島 庸平
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