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大手企業X社は、将来の経営を担う人材の育成を目的として、非常にハイレベルのトレーニングプログラムを開発しました。そして、受講者の視野を広げさせるため、異業種他社からの参加も呼びかけることにしたのです。ただし、同じレベルで議論できるように、声をかける企業は、やはり大手企業に絞りました。
X社人事部の本企画責任者は、候補企業の人事部・人材開発部にコンタクトを取り、説明に回りましたが、反応はあまりよくありません。どうやら、人事部は全社員の底上げを目的とした階層別研修に手一杯で、一部の社員を対象としたプログラムにまで手が回らないようなのです。
しかし、噂を聞きつけた企業の「事業部門」から、直接X社にコンタクトがあり、「是非当社の当部からも参加させてほしい。こういうプログラムをずっと探していたのです。」といった申込みが、複数きたのです。
これは、実際にあった話に基づいて書いています。最近、このような現場の人材開発に関するニーズに、人事部門が柔軟に対応できていないという話を、よく耳にします。特殊な現場のニーズは、現場で対応してほしいというのが本音なのかもしれません。
事業部門の方に、「人事部門に話しても、すごく時間がかかる。スピード感が違う。」という話を伺ったこともあります。
一方で、事業部門では、様々な人材開発の新しいニーズが生まれてきています。それを、人事部門で受けてもらえないのであれば、自分で探すしかありません。本ケースのように、情報をキャッチできればよいのですが、ほとんどの企業の事業部門には、外部の人材開発に関する情報はなかなか入ってきません。また、そのための人材を揃えておくこともできません。
これは大手企業の話ではありますが、人材開発について、ニーズとサプライの間にギャップが発生しており、それが少しずつ大きくなっているのかもしれません。
従来の枠組みの中で人材開発を捉えていると、環境変化に対応できなくなってしまうかもしれないことを認識しておいたほうがいいでしょう。