経営: 2009年2月アーカイブ

昨日、ある方とeラーニングと集合研修のブレンディド型研修について意見交換しました。

 

Eラーニングは、10年くらい前からインターネットの爆発的普及とともに、普及しました。と言っても、当初の予想ほどではないのではないでしょうか。

 

どんな事業でもそうですが、サービスの普及当初は、ハード面に目が向きです。eラーニングで言えば、ラーニング・マネジメント・システム(LMS)の拡販とともに、eラーニングソフトが開発されました。供給者から見れば、事業の立ち上がり時、単価が相対的に高いため、ハードの売上規模はある程度期待できますが、ソフトの売上規模は普及が一定規模にならないと大きくならないため、投資のインセンティブが湧きにくくなります。ましてや、ゲームソフトと違って創造性を発揮する余地はそれほど大きくないため、ソフトでの差別化は困難です。その結果、ハードベンダーとソフトベンダーが分離し、両者の相乗効果を図ることが難しいのです。だから、想定ほどには市場が立ち上がっていないのでしょう。

 

そのような状況のもとで、eラーニングと集合研修のブレンドという発想が出てきます。eラーニングと集合研修双方の弱点を補いあう、素晴らしいサービスというわけです。eラーニング陣営から見れば、集合研修とセットすることにより差別化が可能と考えます。一方、集合研修ベンダー陣営は、クライアントのコスト削減圧力に対する対応として、消極的にeラーニングの組み込みを考えることでしょう。

 

しかし、ことはそう簡単ではありません。eラーニング陣営が積み上げてきたマスに対して規模を獲得し、初期投資を一気に回収するビジネスモデルと、集合研修ベンダーが磨いてきたハイタッチな擦り合わせ型ビジネスモデルとは、大きく異なります。それぞれ異なる思惑の中で、ブレンド型を成功させることは、ハードとソフトの融合以上に難しいかもしれません。

 

とは言え、ユーザーである企業側が、ある程度ブレンド型を望んでいることも間違いないでしょう。サービス提供側が、ニーズに創造的に応えることができるか、ベンダー企業の力量が試されます。

落語に三題話というのがありますね。寄席で、お客さんから出された何の脈絡もない三つの言葉を使って、ひとつの話を創るという、あれですね。例えば、「屋根とノーベル賞とホームレス」、これらを使って、不思議なほど見事な話を創りあげます。

 

与えられた三つの言葉を使わなければいけないというのは、大きな制約です。でも、

制約があるから、面白い話が創れるとも考えられるのではないでしょうか。池に、三つの小石を同時に投げいれたとします。三か所にばらばらに落ちて、それぞれが波紋を広げます。そして、どこかで波紋が重なります。屋根という言葉には、さまざまなイメージが含まれており、それがどんどん頭の中で膨らんでいく。同じように、ノーベル賞やホームレスからも、イメージがどんどん膨らんでいく。そして、どこかでそれらが重なるのでしょう。

 

経営もそれと似ているように感じます。たくさんの制約、つまり足枷の中で、結果を出していくのが経営と言えるでしょう。ホンダが自動車で成功の礎を築いたのは、1972年にアメリカの厳しい排気ガス規制をクリアするためにCVCCエンジンを開120px-CVCC.jpg発したことによるといわれています。また、トヨタのカンバン方式も戦後、資本が不足している中で生産を拡大するために生みだされたそうです。足枷があるから、それをクリアするために想像力と創造力を駆使して突破口を見つけ出すのが人間です。三題話と同じで、制約は足枷ではなく、創造の種なのかもしれません。

 

敗戦後しかり、オイルショックしかり、公害問題しかり、バブル崩壊しかり(円安の貢献は大ですが)、日本人は制約を梃に進化する力が優れているのではないでしょうか。

 

そういうスタンスで現在自分が置かれている状況を見渡してみれば、また違った世界が見えてくるかもしれません。

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