ヒトの能力: 2014年7月アーカイブ

ワールドカップ・ブラジル大会も、いよいよ14日の決勝(ドイツVSアルゼンチン戦)を残すだけとなりました。昨日のアルゼンチンVSオランダ戦は、PK戦でオランダが破れたわけですが、私はオランダのキーパーに注目していました。

 

というのも、オランダは準々決勝のコスタリカ戦で、オランダのファンハール監督は延長後半終了間際にゴールキーパーを正GKのシレッセンからPK戦に強いとされるクルルに代えましたことが頭に残っていたからです。

ファンハール監督は.jpg

3人しかできない選手交代の最後の一枚を、このためにとっておいたのです。結果は、監督の読みどおりクルルが2選手のPKを止め、オランダが勝利しました。ズバリ的中の監督采配と感嘆しました。

 

しかし、一方でGKの晴れ舞台であるPK戦で交代させられたシレッセンは、ベンチ前のペットボトルを蹴り上げ怒りを露わにしたそうです。また、代わったクルルは、ボールを定位置におこうとするコスタリカのキッカーに、何やら一生懸命話しかけているのが見えました。最初は、元同じクラブチームにいたか何かの旧知の相手選手に、健闘を誓うべく声をかけているのかと思ったのですが、全選手に声をかけているのでそうではなさそう。どうやら、野村元監督が捕手時代に得意としたささやき戦法だったようです。キッカーも極度の緊張状態のはず。意図的に集中力を乱させることはフェアではありません。クルルは後日インタビューで「反則はしていない」と弁明していましたが、ちょっといやーな印象でした。

 

コスタリカの最後のPKを止め勝利を決めた瞬間、真っ先にクルルに駆け寄ったのは交代させられたシレッセンでした。歓喜して抱き合う二人をみた瞬間、個人の感情はともかくチームの勝利を喜ぶ姿に、もし日本人選手だったらどうだろうと一瞬考えてしまいまいました。

 

そして、昨日の準決勝。くしくもオランダは、前試合と同じく拮抗した試合展開で延長戦へ。予想通りファンハール監督は後半終了まで三枚目の交代カードを切りません。PK戦に備えているのでしょう。この時点でPK戦が楽しみになりました。

 

ところが、延長前半の96分、チームの大黒柱FWファンペルシー交代に三枚目のカードを切ったのです。意外でした。きっと、ファンペルシーが相当疲れていたのでしょう。監督としても不本意な交代だったのではないでしょうか。これでクルルの出番はなくなりました。そうして予想通りPK戦突入。


シレッセンには、期するものがあったに違いありません。自分の実力を見せつけ、前の試合で交代させた監督を見返してやるんだと。ましてや、先行オランダの一番手は失敗。いやがおうにも気合が入ります。シレッセンが平常心でいることは、とても難しかったでしょう。結果は全4人にゴールを決められて敗退決定。その直後クルルがどうシレッセンに接したのかは、残念ながら観ることができませんでした。

 

振り返ってみるに、コスタリカ戦でのGK交代は、果たして正しい意思決定だったのでしょうか?確率では交代することが正しかったのでしょう。そしてその確率通りの結果となった。しかし、正GKであるシレッセンは誇りを傷つけられた。延長前半で、ファンペルシーの交代を決めるとき、ファンハール監督はシレッセンの名誉挽回の奮起に期待をしたのかもしれません。あるいは、シレッセンに名誉回復の機会を与えようと思ったのかも。いずれにしろ、怪我をしたわけでもないファンペルシーを交代させる判断は、非常に難しかったに違いありません。

もし、ファンペルシーを交代させず、PK線はクルルが守ったとしたらどうなっていたか・・・・。

 

選手の精神状態は非常に微妙なもの。それを読み切り、采配をふるう監督とは過酷な仕事です。最後は人間をどれだけ洞察できるかにかかっているのだと思います。

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