企業が持続的に維持・成長するには、企業の能力を高めなければなりません。当たり前ですね。では、「企業の能力」を高めるとは、どういうことでしょうか?
この場合の「企業」という言葉には、個人と部門(チーム)と企業体の三つが内包されていると考えると理解しやすいと思います。企業体は部門の集合体であり、部門は個人の集合体です。
次に、「企業の能力」を高めるためには、この三つの主体の関係性に着目する必要があります。それらは重なっているものでもあり、外から影響を与えるものでもあります。主体でありながら客体でもあります。
少し話はそれますが、このうち日本企業で特に重要なのは、部門(チーム)です。もう少し詳しくいえば、「職場」です。職場とは、顔の見える人々の集団です。大企業であれば、「課」でしょうし、中小企業であればそれが「部」であったり「会社」であったりするでしょう。個人は「職場」に埋め込まれているイメージです。
さて、企業の能力を高めるために、どのような手段を取ることができるでしょうか。その主体に直接働きかける方法と、「場」や環境を整えることで間接的に影響力を行使する方法の二つがあります。
一般によく行われているのは、「企業」が「個人」に直接、間接に働きかける方法でしょう。研修やMBOインタビューなどが直接で、人事・評価制度、予算制度などが間接にあたります。企業から部門を経由して個人に働きかけるという一方向の流れです。スピードは劣るけれどもカスケードダウンで、確実に会社の意図が浸透されるというスタイルです。経営環境の変化が少ない時代であれば、これで十分でした。
しかし、現在は経営の不確実性が高まり、安定性よりもスピードや変化への適応力が重要になっています。そうなってくると、これまでの一方向の流れでは柔軟かつ迅速に適応ができません。そこで、三つの主体間の相互への働きかけが必要になってきます。賢い「企業」(本社)の指示を待っている間に、競争に負けてしまうリスクが高いからです。変化を察知した主体が、それ以外の主体に迅速に働きかけることができるかどうかが、あるいは主体自らを変化させることができるかどうかが、生き残りの決め手になってきていると考えます。
もう少し具体的に、能力開発の場面を想定してしましょう。例えば、「部門」が「企業」に働きかける動きも必要になってきます。自部門(A)の能力を高めるには他のX部門との協働作業が必要であるとA部門が判断すれば、自ら動いてX部門に働きかける。本来、部門間調整は本社の役割ですが、それを待っていては遅れてしまう。本社は追認すればいい。結果としてA部門が「企業」に働きかけたことになります。
あるいは、「個人」が「企業」の能力開発のために働きかけることも必要です。例えば、そのための直接的手段としてモラルサーベイがあります。しかし、ただアンケートを取って分析するだけでは無意味です。サーベイの結果によって企業を動かすくらいに本気でなければなりません。そのくらいの緊張感を持って企業は個人の働きかけを受容して、初めて企業として変化に適合できる能力を開発することができるのです。
このように、個人と部門と企業の双方向の関係性という観点で、企業の能力開発を図っていくことが、不確実性のますます高まる2017年、必要になってくると思います。そのためには、多少強引にでも関係性に「介入」することも検討すべきでしょう。
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