鳩山政権への信頼感も失墜し、政治も経済も閉塞状態に陥っています。またも諦めムードがまん延する元気のない日本です。
そんな時、哲学者久野収さんのこんな言葉を見つけました。
確率や法則に従うとすると、正に現在はにっちもさっちもいかない閉塞状 況だ。でも、私は人間を信頼している。特異点がどこかにはるはずだ。大きな雪崩も、ほんの小さな石が崩れることから引き起こされる、そんな特異な点がある。確率や過去からの法則に従って考えればとても起きるとは考えられないことが起きるのだ。人間はそんな営みを続けてきた。だから悲観はしない。
これは、現在の言葉ではなく、86年になされた瀬戸内寂聴さんとの対談での発言です。それからもう、24年も経っています。
その話を聞きながら、多くの企業が変わりたいと考えているにも関わらず、変わらない現実について、思いを巡らせました。確率論でいったら、経営危機にでも陥らない限り、組織を中から変えることは困難です。そうなる前に、どうやって変えるのか。組織の中の特異点を探すことが、ひとつの突破口になるかもしれないと思ったのです。
かつて暴力の街だったニューヨーク市が安全な街に変わったのは、ジュリアーノ前市長が警察署長(たしか)だった時に、地下鉄の落書きを徹底的に消し続けたことからだったそうです。地下鉄の落書きが特異点だったのかもしれません。
それと同じように、企業組織の中の特異点を見つけ、そこを何があっても愚直に刺激し続けることが決め手になるような気がします。もしかしたら、今、名もない誰かがその営みを、一人で始めているかもしれません。そういう活動を見つけ出し、スポットライトをあててみましょう。
「変革は辺境から」という言葉もあります。特異点は、辺境にこっそりあるのかもしれません。久野さんは99年に亡くなりましたが、人間への信頼は引き継いでいきたいものです。
注:特異点とは、数学と物理の用語で、ある基準の下でその基準が適用できない点のこと。
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